トライアスロンのスイム競技は、多くの場合、海や川などのオープンウォーターで泳ぐことになります。
しかし、日々のスイムトレーニングでは、プールを利用している人がほとんどでしょう。
海や川などのオープンウォーターでのスイムは、プールで泳ぐのとは勝手が違います。
プールとオープンウォーターでは、どのような違いがあるのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
プールとオープンウォーターの違い
プールとオープンウォーターの違いを解説します。
オープンウォーターで泳ぐ前によく読んでイメージトレーニングをしておきましょう。
違い① ウエットスーツ
まず、大きな違いとして、プールは水着でオープンウォーターでは、ウエットスーツという点です。
トライアスロン大会では、ウエットスーツ着用義務の場合が多いです。
※OWS(オープンウォータースイム)やアクアスロンでは、水着で参加できる大会もあります。
ウエットスーツは、着るだけで浮力が増します。
本当によく浮きます。
初めてウエットスーツを着て海を泳いだ時は、浮き輪をしているのかと錯覚するほどでした
ウエットスーツは、初心者トライアスリートにとって心強い味方となります。
しかし、死亡事故もあるトライアスロン。
オープンウォーターをなめていはいけません。
下の記事にトライアスロンの死亡事故について詳しく書いているので、参考にしてみてください。
また、ウエットスーツを着ることで、体温管理が難しくなることがあります。
国内のほとんどのトライアスロン大会でウエットスーツは、着用が義務付けられていますが、真夏のウエットスーツは、本当に暑いです。
しかし、その反面、春や秋の比較的、涼しい大会では、ウエットスーツは、防寒にもなります。
真夏であっても、早朝や雨天時のスイムはとても冷えます。
上手に体温管理するには、経験も必要になってくるでしょう。
ウエットスーツは、動きにくいというデメリットもあります。
肩回りや足回りが動かしづらく、ストロークやキックがしにくくなります。
自分の体にフィットしたウエットスーツをしっかりと選びましょう。
ウエットスーツでのスイムは、首元や脇が擦れやすいです。
擦れ防止の観点からも、自分の体に合ったウエットスーツを選ぶことは大切です。
自分に合ったサイズのウエットスーツを正しく着ることが大切です
違い② 塩分濃度
海には塩分が含まれています。
塩分が含まれている海には、プールとは異なり、体を浮かせる働きがあります。
塩分濃度が高いということは、密度が高くなるため、浮力も高くなるということです。
塩分濃度が非常に高い死海は、体が浮くことで有名です
浮きやすいということは、泳ぎやすいということです。
しかし、オープンウォーターをなめてはいけません。
トライアスロンの死亡事故で最も多いのは、スイムパートです。
練習は、しっかりとしておきましょう。
- プールより塩分の多い海は、体が浮きやすい
違い③ 波や潮流
オープンウォータースイムでは、波や潮流の影響でプールで泳ぐように泳げません。
いつの間にか、波に流されて、コースを大きく外れることもあります。
波や潮流が泳ぎの手助けをしてくれる場合もあれば、大きな抵抗となり、泳ぎの妨げになることもあります。
プールでのスイムのように、一定のペースで泳ぐのは難しいでしょう。
ストリームラインを意識して水の抵抗を減らしましょう
また、海でのスイムは、波があるために安定した息継ぎができません。
息継ぎをしようとしたとことにちょうど波が来て、海水を飲んでしまうということが頻繁に発生します。
そんな時こそ冷静になりましょう。
焦ってパニックになってしまうと、ますます苦しくなってしまいます。
ウエットスーツは、浮きやすいことを思い出して、体の力を抜いてみましょう。
自然と体が浮いてくるので、落ち着いて深呼吸です。
オープンウォータースイムでは、常に冷静でいることが大切です。
- 波や潮流の影響でプールのように泳げない
- 波の影響で息継ぎが難しい
- オープンウォータースイムでは、冷静でいることが大切
違い④ 水質
プールとオープンウォーターでは、水質が大きく異なります。
プールは、水質管理がしっかりと行われ、視界もクリアです。
しかし、オープンウォーターでは、そうはいきません。
水質にもよりますが、オープンウォータースイムでは、視界がほとんどない場合が多いです。
ヘッドアップしてコースを確認しながら泳がないと、あっという間にコースから大きく外れることになってしまいます。
関東で行われているオープンウォータースイムの多くは、視界がほぼ0です
また、東京オリンピック2020のトライアスロン競技では、選手が嘔吐したことが非常に話題になりました。
そもそも、東京湾は、汚いです。
東京湾については、下の記事に詳しく書いてあるので、参考にしてみてください。
東京湾ではなくても、海には独特のにおいがあります。
えずきそうになりながら泳ぐこともあるでしょう。
私、ゆくトラ(詳しいプロフィールはこちら)も、関東で行われたあるトライアスロン大会では、息継ぎのたびにオエオエしたことがあります。
また、湖を泳ぐある大会では、足元が藻だらけでぬめぬめしていたこともあります。
トライアスロン大会後には、内臓の調子が悪くなることもしばしばです。(激しい運動によるところが大きいと考えていますが、水質の問題も無視はできません)
東京オリンピック2020のトライアスロンやオープンウォータースイムでは、大腸菌の濃度も大きな問題となりました。
オープンウォーターと水質汚染は、切っても切り離せない問題だと言えるでしょう。
- オープンウォーターは、プールよりも水質が悪い場合がほとんど
- 視界が悪い、悪臭がすることもある
- ヘッドアップは、必須の技術
違い⑤ 水温
プールとオープンウォーターでは、水温も大きく異なります。
プールは、水温が一定に管理されていますが、オープンウォーターでは、そうはいきません。
オープンウォーターでは、天候や大会の時期によっては、凍えながら泳がなければならないこともあります。
温水プールの水温は、おおよそ30℃前後に保たれています。
オープンウォータースイムでは、季節や気候によっては、水温が15℃前後や20℃前後、25℃以上になることもあります。
私、ゆくトラ(詳しいプロフィールはこちら)は、あるアクアスロンの大会で、水温15℃を泳いだことがありますが、なかなか貴重な体験ができました。
その大会については、下の記事に感想をまとめていますので、参考にしてみてください。
水温の違いは競技パフォーマンスにも大きく影響します。
ちなみに、オープンウォータースイミング(OWS)の競技条件として、
水温20℃以上の競技ではウエットスーツの着用は不可。
水温20℃未満の競技では男女ともにウエットスーツの着用が可能で、18℃未満の場合ウエットスーツを着用しなければならない。ウエットスーツは胴体、背中、肩、膝を完全に覆うもので、首、手首、足首を超えてはならない。
競技が実施できる水温は16℃以上31℃以下と規定されている。
引用元:オープンウォータースイミング(Wikipedia)
としています。
水温と水泳に関しては、下の記事に詳しくまとめているので、参考にしてみてください。
- オープンウォーターは、季節や気候によって水温が大きく異なる
- 水温の違いは、競技パフォーマンスに大きく影響する
違い⑥ 深さ
プールとオープンウォーターでは、深さも異なります。
プールでは、立った時に足がつきますが、海や川では、足がつかないことの方が多いです。
これは、初心者にとって、心理的にも大きな壁となるのではないでしょうか。
また、オープンウォーターでは、水質にもよりますが、水底が見えないことが多いです。
プールでは、水底のラインを見ていればまっすぐに泳げますが、オープンウォーターでは、そうはいきません。
しっかりとヘッドアップしてコースを確認しましょう。
- オープンウォーターでは、足がつかない深さを泳ぐ
違い⑦ 浮遊物
海や川でのスイムでは、浮遊物などが泳ぎの妨げになることがあります。
海を漂う海藻が体にまとわりついたり、ゴミが流れてきたりします。
下の画像は、第4回横浜海の公園アクアスロン大会(感想はこちら)のものです。
海藻が多かったです…
オープンウォーターでは、だいたい何かしらが浮いています。
一番イヤなのは、クラゲです。
海のスイムでは、クラゲが大量発生していることもあります。
ぐにゃぐにゃしていて気持ち悪いです
特に注意しなければいけないのが、人を刺すクラゲです。
日本の近海には、毒性の強いクラゲも生息しています。
場合によっては、事前にクラゲ除けのクリームを塗るなどの対策をしておきましょう。
- オープンウォーターでは、浮遊物が泳ぎの妨げになることがある
- 浮遊物は、海藻・ゴミ・クラゲなど
違い⑧ 集団でのスイム
プールのように規則正しくコースロープで分けられていないオープンウォーターでは、集団でのスイムとなります。
集団で泳ぐということは、他者との接触なども起こるということです。(一般にバトルといいます)
特に、一斉に泳ぎ始めるスタート地点では、頻繁に接触などのアクシデントが起こります。
顔面を殴られてゴーグルがズレてイラっとすることもあります
以下の文章は、第3回霞ヶ浦トライアスロンフェスタの感想記事の一部抜粋です。
バトルバトルバトル…
ずっとバトルが続きました…激しかったです。
顔面は2回蹴られました。右目のゴーグルを蹴られました。
若干アザっぽくなりました。
数回殴られました。
体の上に乗られました。体が沈みました。
なかなかに激しいレースでした
中には、平泳ぎしている人もいます。(平泳ぎのキックは強烈だから要注意です)
他の選手との接触を避けるためには、スタート位置を工夫することが大切です。
泳ぎに自信がない初心者は、スタート集団の後ろの方や端の方をスタート位置にしましょう。
スタート集団の真ん中や中途半端に中盤からスタートすると、まず間違いなくバトルに巻き込まれます。
スイムの折り返し地点であるブイの周辺も密集しがちです。
接触などが嫌なのであれば、ブイを大回りするなどして、密集を避けましょう。
また、集団で泳ぐと、どうしても他人に自分のペースを乱されてしまいます。
初心者は、特にペースを乱されがちです
スタート直後は、アドレナリンが高まりがちなのか、多くの選手が(特に初心者が)オーバーペースになりがちです。
落ち着いて自分のペースを守りながら泳ぎましょう。
- オープンウォーターは、集団でのスイム
- バトル(他選手との接触)あり
- スタート直後やブイ周辺はバトルがよく発生する
- バトルを避けるためには、スタート位置やコース取りを工夫しなければならない
- 集団で泳ぐと自分のペースを乱される
違い⑨ コース
オープンウォーターは、プールのような直線のコースではありません。
三角形の周回コースもあれば、四角形のコースもあるし、ブイまで行って帰ってくるだけのコースもあります。
事前に実施要用をよく読んだり、説明会の話をよく聞いたりして、コースをしっかりと確認しておきましょう。
また、ヘッドアップが必須です。
水面から顔を出して、ブイなどの目標物をしっかりと確認しながら泳がなければなりません。
ヘッドアップは大変ですが、それを怠るとコースを外れてしまいます。
他にも丸いブイや白色のブイなど色々なものがあります。
海に浮かぶとこんな感じです。
ヘッドアップをしてブイをしっかりと確認しながら泳がなければいけません。
ブイの場所と周りの景色や目立つ建物等の位置関係を覚えておくのもオススメです。
波の影響や光の反射でブイが見えないこともあります。
そんなときに、高い建造物などとブイの位置関係を把握しておけば、大体の正しいコースを泳ぐことができます。
試泳のときに海から見たブイの感じをつかんだり、目印となりそうな建造物等を見つけたりしておきましょう
- 事前にコースをよく確認しておく
- ヘッドアップが必須
- ブイの場所と周りの景色や目立つ建物等の位置関係を覚えておく
違い⑩ おしっこ
生理現象です。
水中にいると、どうしても尿が近くなってしまいます。
プールで用を足したくなったらトイレに行けばいいですが、オープンウォーターでは、そうはいきません。
そう、大自然の中でおしっこをするのです。
ウエットスーツの中をじんわりと温かいものが広がっていく。
その背徳感が癖になっていく。
スイムは、絶好のおしっこチャンスです。
最初は抵抗がありましたが、今は何ともありません…
みんなしてますよね…
- オープンウォーターでは、トイレに行けないこともある
- 大自然の中でおしっこ(むしろ、おしっこのチャンス?)
まとめ
プールとオープンウォーターには、たくさんの違いがあります。
同じ泳ぐことだろうと高をくくっていると痛い目に合ってしまうでしょう。
泳ぐことが得意な方も、その違いを知識として、しっかりと把握しておくことが大切です。
トライアスロン初心者は、本番の大会の前に、1~2回ほど、オープンウォーターで練習しておくことをオススメします。
実際に練習しておくと、本番のレースで落ち着いて泳ぐことができるでしょう。
トライアスロン初心者は、アクアスロンから始めてみるのもオススメです。
その理由について、下の記事にまとめていますので、参考にしてみてください。
本番の大会では、ほとんどの場合、試泳があります。
早めに会場入りしておいて、試泳をしておくことも大切です。
オープンウォータースイムは、大自然の中で泳ぐので、開放感があって楽しいです。
ぜひ挑戦してみてください。
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